遺品整理はご逝去の翌日から始めることもできますし、数ヶ月待ってから着手することもできます。法律で定められた開始時期の決まりはありません。
ただし、相続放棄は3ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内という期限があり、賃貸物件では賃料が発生し続けます。
本記事では、法的期限と実務上の都合を整理したうえで、あなたの状況に合った開始時期の判断軸を示します。
この記事でわかること
- ✓遺品整理に法的な開始期限はないが相続手続きには期限がある
- ✓葬儀直後から気持ちが落ち着くまで、5つの一般的な開始タイミング
- ✓賃貸・持ち家、相続人の人数、遺品の量から判断する開始時期の決め方
- ✓始める前に確認すべき遺言書・相続放棄・親族合意の3つのポイント
- ✓開始時期が遅れた場合に発生する金銭的・法的リスク
遺品整理を始める時期に明確なルールはない
遺品整理そのものには法律で定められた開始時期の決まりがないため、自分のペースで進められます。
ただし、相続手続きには期限があり、賃貸物件では賃料が発生し続けるため、状況によっては早めの対応が求められます。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 法的義務 | 遺品整理の開始時期を定めた法律はない |
| 相続手続きの期限 | 相続放棄は3ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内 |
| 賃貸物件の場合 | 賃料が発生し続けるため早めの対応が望ましい |
法律で定められた期限は存在しないため自分のペースで進められる
遺品整理を何月何日までに完了しなければならないという法律上の義務はありません。
故人の遺品をいつ片付けるかは遺族の判断に委ねられており、気持ちの整理がつくまで待つことも、早めに着手することも可能です。
親族から急かされても、法的には焦る必要がないケースも多くあります。
ただし相続放棄は3ヶ月・相続税申告は10ヶ月という期限がある
遺品整理そのものに期限はありませんが、相続手続きには期限があります。
相続放棄を検討する場合は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、この期限内に遺品を処分してしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があります。
相続税の申告義務がある場合は、死亡日の翌日から10ヶ月以内に申告と納税を完了させる必要があります。
財産の全体像を把握するためには遺品の確認が欠かせないため、申告期限を意識した計画が求められます。
参考
- 国税庁「相続税の申告と納税」(最終閲覧日:2026年5月19日)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(最終閲覧日:2026年5月19日)
賃貸物件の場合は賃料発生の都合で早めの対応が求められる
故人が賃貸住宅に住んでいた場合、死亡後も契約は継続しており、退去手続きを完了するまで家賃が発生し続けます。
賃貸契約では一般的に解約予告期間が1〜2ヶ月と定められているケースが多いため、まず実際の契約書を確認した上で、退去手続きの方針を決める必要があります。
解約予告期間を過ぎて家賃が余分に発生しないよう、遺品整理と退去手続きを合わせて計画することが重要です。
また原状回復の程度によっては追加費用が発生するため、早めに大家や管理会社へ連絡し、退去の段取りを相談することが望ましいでしょう。
遺品整理を始める一般的なタイミングは5つ
遺品整理を始めるタイミングは大きく分けて5つあり、それぞれ異なる理由と背景があります。
葬儀直後から気持ちが落ち着くまで、状況に応じて選ぶことになります。

葬儀直後(死亡から1週間以内)は賃貸や施設退去の期限がある場合に選ぶ
葬儀が終わった直後に遺品整理を始めるケースは、賃貸住宅や高齢者施設の退去期限が迫っている場合に多く見られます。
賃貸契約では家賃が日割り計算されず、1ヶ月単位で発生するため、月をまたぐ前に退去できれば翌月分の家賃を抑えられます。
また高齢者施設でも次の入居者を待つ事情から早期退去を求められることがあり、1週間程度での対応を迫られる場合もあります。
この時期に着手する場合は、親族の協力を得るか、業者へ依頼して短期間で完了させる方法が現実的です。
諸手続き後(死亡から2週間~1ヶ月)は役所手続きが落ち着いた段階
死亡届の提出、年金の停止手続き、健康保険の資格喪失届など、死亡後すぐに対応が必要な役所手続きが一段落したタイミングで遺品整理を始めるケースも一般的です。
葬儀直後は慌ただしく、遺品整理に集中する時間が取りにくいため、諸手続きがひと段落した2週間から1ヶ月の間に着手する方が落ち着いて作業できます。
賃貸物件でも解約予告期間を考慮すれば、このタイミングであれば余裕を持って対応できるケースが多いでしょう。
四十九日法要後(死亡から49日後)は親族が集まり合意を得やすい
四十九日法要は親族が集まる機会であり、遺品整理の方針を相談するタイミングとして選ばれることが多くあります。
相続人が複数いる場合、遺品の分配や処分について全員の合意を得る必要があるため、法要の際に話し合いの場を設けることができます。
また四十九日を一つの区切りとして気持ちの整理をつけ、そこから遺品整理に着手する遺族も少なくありません。法要後であれば気持ちの面でも作業に向き合いやすくなるでしょう。
相続税申告前(死亡から7~8ヶ月)は財産確定のための期限を意識
相続税の申告期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内と定められており、申告のためには故人の財産を正確に把握する必要があります。
遺品の中に現金、通帳、不動産の権利証、貴金属などの財産が含まれている可能性があるため、申告期限の2~3ヶ月前にあたる7~8ヶ月の時点で遺品整理を始めるケースもあります。
財産の見落としがあると申告漏れとなり、後から追徴課税を受けるリスクがあるため、余裕を持って着手することが望ましいでしょう。
参考
- 国税庁「相続税の申告と納税」(最終閲覧日:2026年5月19日)
気持ちが落ち着いてからでも問題ないが放置リスクには注意
法的な期限や賃貸契約の制約がない持ち家の場合、気持ちの整理がつくまで遺品整理を待つ選択肢もあります。
故人との思い出が詰まった遺品に向き合うには精神的な準備が必要であり、無理に急いで作業すると後悔することもあります。
ただし長期間放置すると、空き家の管理責任が発生し、火災や盗難、建物の老朽化といったリスクが高まります。
また固定資産税や維持費も継続して発生するため、いつまでも先延ばしにすることは避けたいところです。
あなたに合った開始時期を決める3つの判断軸
遺品整理の開始時期は、故人の住まいの種類、相続人の人数、遺品の量によって変わります。
この3つの判断軸を整理することで、自分に合ったタイミングを見極められます。

故人の住まいが賃貸か持ち家かで緊急度が変わる
賃貸住宅の場合は家賃が日々発生し、退去手続きにも時間がかかるため、葬儀後すぐに着手する必要性が高くなります。
一方、持ち家の場合は退去期限がないため、気持ちの整理がつくまで待つことができます。
ただし持ち家でも固定資産税や維持費は継続して発生するため、長期間放置することは避けたほうがよいでしょう。
賃貸か持ち家かによって緊急度が大きく変わるため、まずこの点を確認することが判断の出発点になります。
相続人が単独か複数かで調整の必要性が決まる
相続人が自分一人の場合は、自分のペースで遺品整理の時期を決められます。
一方、相続人が複数いる場合は、遺品の分配や処分について全員の合意を得る必要があり、一人で勝手に進めるとトラブルの原因になります。
親族が遠方に住んでいる場合は日程調整にも時間がかかるため、四十九日法要や法事など親族が集まる機会を利用して話し合いの場を設けることが現実的です。
相続人の人数と居住地を確認し、調整の手間を見積もっておくことが大切です。
遺品の量と作業者の人数で所要日数を見積もる
遺品の量が少なく、作業者が複数いる場合は数日で完了することもありますが、一人暮らしの故人が長年住んでいた家で、作業者が一人しかいない場合は数週間かかることもあります。
賃貸物件で退去期限が迫っている場合や、相続税申告の期限を意識する場合は、所要日数を見積もったうえで逆算して開始時期を決める必要があります。
自分で作業する場合は週末ごとに通う回数を計算し、業者に依頼する場合は見積もり時に作業日数を確認しておくとよいでしょう。
遺品整理を始める前に確認すべきこと
遺品整理を始める前に、相続人全員の合意、遺言書の有無、相続放棄の検討状況を確認しておく必要があります。
これらを確認せずに作業を始めると、後からトラブルに発展する可能性があります。

| 確認項目 | 確認が必要な理由 |
|---|---|
| 相続人全員の合意 | 一人で勝手に処分するとトラブルの原因になる |
| 遺言書・エンディングノート | 故人の意思が記されている可能性がある |
| 相続放棄の検討 | 放棄する場合は遺品に手を付けてはいけない |
相続人全員に開始の合意を取りトラブルを未然に防ぐ
相続人が複数いる場合、遺品整理を始める前に全員の合意を得ることが欠かせません。
遺品の中には金銭的価値のあるものや思い出の品が含まれており、一人で勝手に処分すると「大切なものを捨てられた」「価値のあるものを独り占めされた」といったトラブルに発展します。
特に貴重品や形見の分配については、誰がどの品を受け取るかを事前に話し合い、記録を残しておくことでトラブルを防げます。
親族が遠方に住んでいる場合は、電話やビデオ通話で意思確認を行い、メールやLINEで記録を残しておくとよいでしょう。
遺言書・エンディングノートの有無を最優先で確認する
遺品整理を始める前に、遺言書やエンディングノートの有無を確認することが重要です。
遺言書には財産の分割方法だけでなく、特定の遺品を誰に渡したいかといった故人の意思が記されている場合があり、これを無視して処分すると相続人同士のトラブルや法的問題に発展する可能性があります。
公正証書遺言は、全国の公証役場にある検索システムで確認可能です。
法務局に預けられた自筆証書遺言は、2020年7月開始の「自筆証書遺言書保管制度」を利用し、法務局(遺言書保管所)へ照会できます。
一方、自宅保管の自筆証書遺言や秘密証書遺言は検索システムの対象外となるため、自宅の金庫や仏壇、書斎の引き出し、貸金庫などを念入りに捜索する必要があります。エンディングノートには法的効力はありませんが、故人の希望が記されているため、見つけた場合は内容を尊重することが望ましいでしょう。
参考
- 法務省民事局「自筆証書遺言書保管制度のご案内」(最終閲覧日:2026年5月19日)
- 政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方」(最終閲覧日:2026年5月19日)
相続放棄を検討中の場合は遺品に手を付けてはいけない
相続放棄を検討している場合は、遺品整理に着手する前に必ず弁護士や司法書士へ相談する必要があります。相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する手続きですが、申述前に相続財産として価値のある遺品を処分したり、遺品の中から金銭を使ったりすると、民法921条により「単純承認」とみなされ、放棄が認められなくなります。
ただし、明らかに経済的価値のないゴミや腐敗物の廃棄は一般的に保存行為として扱われるケースもあります。何が「処分」に当たるかの判断は事案ごとに異なるため、遺品に手を付ける前に必ず弁護士や司法書士に相談してください。故人に借金が多い場合や相続人同士で放棄の意向が分かれている場合は、まず専門家の助言を受けることが安全です。
参考
- 裁判所「相続の放棄の申述」(最終閲覧日:2026年5月19日)
遺品整理の開始時期が遅れるとどうなるか
遺品整理を先延ばしにすると、金銭的な負担が増え、相続手続きや税務申告に支障が出るだけでなく、空き家としてのリスクも高まります。
開始時期を決める際には、これらの影響を考慮する必要があります。
| リスクの種類 | 具体的な影響 |
|---|---|
| 金銭的負担 | 賃貸物件の家賃、持ち家の固定資産税が継続発生 |
| 相続手続きへの影響 | 財産確定が遅れ、相続税申告期限に間に合わない |
| 空き家リスク | 火災・盗難・老朽化などのトラブルを招く |
賃貸物件の賃料や持ち家の固定資産税が継続して発生する
賃貸物件の場合、遺品整理を先延ばしにすると家賃が毎月発生し続けます。月額家賃が5万円の場合、3ヶ月放置すれば15万円の負担になります。
また退去手続きには解約予告期間が必要なため、遺品整理の完了から退去までに1ヶ月程度の余裕を見ておく必要があります。
持ち家の場合も固定資産税や都市計画税は継続して課税されるため、長期間放置すると税負担が重なります。
水道光熱費の基本料金も解約するまで発生し続けるため、金銭的な理由からも早めの対応が望まれます。
相続手続きや相続税申告の期限に間に合わなくなるリスクがある
遺品整理を先延ばしにすると、相続財産の全体像を把握できず、相続税申告の期限に間に合わなくなるリスクがあります。
相続税の申告期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内であり、期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課されます。
また遺品の中に通帳や不動産の権利証、株式の証券などが含まれている場合、それらを見つけ出して財産目録を作成するには時間がかかります。
申告期限の2~3ヶ月前には遺品整理を完了させ、財産の確定作業に移る余裕を持つことが望ましいでしょう。
参考
- 国税庁「相続税の申告と納税」(最終閲覧日:2026年5月19日)
空き家状態が続くと火災・盗難・倒壊などのトラブルを招く
持ち家を長期間空き家のまま放置すると、さまざまなリスクが発生します。
例えば、人が住まない家は換気が不十分になり、湿気やカビが発生しやすくなります。
また、放火や不法侵入の標的になりやすく、盗難被害に遭う可能性も高まります。
さらには、建物の老朽化が進むと、屋根や外壁が劣化し、台風や地震で倒壊して近隣に被害を与えるリスクもあります。
空き家対策特別措置法により、自治体から勧告を受けた場合は固定資産税の住宅用地特例が適用除外となり、税額が最大6倍になる可能性があります。
ただし、勧告を受けるのは倒壊のおそれや著しい衛生上の問題があるなど一定の状態に達した場合であり、長期放置がそのリスクを高めることに留意が必要です。
参考
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(最終閲覧日:2026年5月19日)
自分で遺品整理をする場合と業者に依頼する場合の違い
遺品整理は自分で行うこともできますし、業者に依頼することもできます。
費用、時間、労力のバランスを考え、遺品の量や期限の有無に応じて選択肢を判断します。
| 選択肢 | メリットとデメリット |
|---|---|
| 自分で行う | 費用を抑えられるが、時間と労力がかかる |
| 業者に依頼する | 短期間で完了するが、費用と信頼性の見極めが必要 |
自分でやれば費用は抑えられるが時間と労力がかかる
自分で遺品整理を行う場合、業者への支払いが不要なため費用を抑えられます。
かかる費用は粗大ゴミの処分手数料やレンタカー代、清掃用品代などに限られ、数万円程度で済むことが多いでしょう。
また、故人の思い出の品をゆっくり確認しながら作業できるため、大切なものを見落とすリスクも減ります。
一方で、家具や家電の運び出しには体力が必要であり、遠方に住んでいる場合は何度も通う時間と交通費がかかります。
遺品の量が多い場合や期限が迫っている場合は、自分だけで完了させることが難しいこともあります。
業者に頼めば短期間で完了するが費用と信頼性の見極めが必要
遺品整理業者に依頼する場合、作業を短期間で完了できる点が大きなメリットです。
1Kの部屋であれば1日、2LDKでも2~3日程度で作業が終わることが多く、賃貸物件の退去期限が迫っている場合や、遠方に住んでいて何度も通えない場合に適しています。
また重い家具や家電の運び出しもすべて任せられるため、体力的な負担がありません。
ただし、費用は部屋の広さや遺品の量に応じて数万円から数十万円かかり、業者によってサービス内容や料金が異なるため、複数の業者から見積もりを取って比較することが望ましいでしょう。また、中には悪質な業者も存在するため、遺品整理士の資格を持つスタッフが在籍しているか、損害賠償保険に加入しているかを確認することが安全です。
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遺品の量・作業者の体力・期限の有無で選択肢を判断する
自分で行うか業者に依頼するかは、遺品の量、作業できる人数、体力、期限の有無によって判断します。
遺品の量が少なく、作業者が複数おり、期限に余裕がある場合は自分で行うことが現実的です。
一方、遺品の量が多く、作業者が一人しかおらず、賃貸退去や相続税申告の期限が迫っている場合は、業者への依頼を検討したほうがよいでしょう。
また自分で始めてみて途中で断念した場合でも、残りの作業を業者に依頼することもできます。
まずは、遺品の量と自分の状況を整理し、無理のない選択肢を選ぶことが大切です。
まとめ
遺品整理は法律で定められた開始時期がないため、自分のペースで進められます。
ただし、相続放棄は3ヶ月、相続税申告は10ヶ月という期限があり、賃貸物件では家賃が発生し続けるため、状況に応じた判断が求められます。
- ✓賃貸物件なら葬儀後すぐから1ヶ月以内、持ち家なら気持ちの整理を優先できる
- ✓相続人が複数いる場合は全員の合意を得てから着手する
- ✓遺言書の確認と相続放棄の検討は遺品整理の前に必ず行う
- ✓開始時期が遅れると金銭的負担や相続手続きへの影響が出る
- ✓遺品の量と期限に応じて、自分で行うか業者に依頼するかを判断する
遺品整理は故人との思い出に向き合う大切な作業であり、焦らずに進めることも、期限を意識して計画的に進めることも、どちらも間違いではありません。自分の状況に合ったタイミングを見極め、親族と相談しながら進めることで、後悔のない遺品整理ができるでしょう。
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